「ナローを使い始めたら手放せなくなる」。これは噂でも伝説でもない。紛れもない真実だ。ナロー未体験の方は「バイブルが単にちょっとだけスリム」なバイブル派生モデルだろ、なんて思っていないだろうか。ナローは伝統が裏打ちする独自の機能と端正な美を秘めた、知的欲求を刺激するサイズなのだ。30年前にナローと出逢い、その機能美に魅せられ、日々常用し続けるユーザーが語る極私的ナロー愛の叫びに少々おつきあいください。
手帳の一番の役割は、忘れてはいけない事柄を書き残すこと。手帳の意味を辞書で調べると「いつも手元に置いて、心覚えのためにさまざまの事柄を記入する小型の帳面」とある。この表現の中で注目すべきは「いつも手元」に置く道具であること、そして「小型」なことだ。人の記憶は1時間過ぎると約40%、1日過ぎると約70%以上を忘れてしまうと言われている。備忘のために絶えず身近に置く手帳はコンパクトでなければならない。ナローはバイブルの筆記面積をほぼ維持したままのスリムかつ薄型な設計。ビジネスの最前線で機動力を発揮させるべく、バッグのすき間やジャケットの内ポケットなどでも携帯しやすいシステム手帳として「ノックス」(当時のノックスブレイン)が1990年に生み出した。
手帳の一番の役割は、忘れてはいけない事柄を書き残すこと。手帳の意味を辞書で調べると「いつも手元に置いて、心覚えのためにさまざまの事柄を記入する小型の帳面」とある。この表現の中で注目すべきは「いつも手元」に置く道具であること、そして「小型」なことだ。人の記憶は1時間過ぎると約40%、1日過ぎると約70%以上を忘れてしまうと言われている。備忘のために絶えず身近に置く手帳はコンパクトでなければならない。ナローはバイブルの筆記面積をほぼ維持したままのスリムかつ薄型な設計。ビジネスの最前線で機動力を発揮させるべく、バッグのすき間やジャケットの内ポケットなどでも携帯しやすいシステム手帳として「ノックス」(当時のノックスブレイン)が1990年に生み出した。
バイブルとミニのサイズを巧みに融合
ナローのリング金具はバイブルと同じで、リフィルの縦の長さもバイブルと同じ170mm。そして横幅はミニと同じ80mmに揃えている。ナローの仕様はバイブルとミニが絶妙に融合しているのだ。ミニのシステム手帳を常用しているユーザーならば直感できると思うが、ミニのあの軽快な握り心地をナローでも同じように体感できる。
上写真は「ピアス」のナロー。コンパクトな設計に徹するためにカバーまわりも極力小型化している。装着しているインデックスは上下の配置で使う「インデックス 天4山タイプ4枚」。ナローの特長を活かして横のはみ出しなしで使うタイプだ。素材は半透明のPP樹脂でソフトな弾力があり、出っ張り具合も絶妙。このインデックスは(ナローに限らず)システム手帳の数多あるアクセサリーの中で飛び抜けた傑作だと思う。自分はバイブルやミニなど多くのシステム手帳でこのインデックスを活用している。
情報のひとつの塊をまとめるのに最適な筆記面積
ナローのリフィルの縦横比は約2対1。バインダーの縦横比もこれに準じて縦に細長い。取り回しもカバーの開閉も軽快で、携帯性にも優れている。手帳を使いたいと思ったら、すぐ開いて速攻で閲覧や書き込みができる。
手帳を備忘録として活用する場合は一般的に箇条書きが多用される。バイブルサイズのユーザーの方は記入した過去のリフィルを見返してみて欲しい。自分の場合、かなりの割合で紙面の右側に空きがある。ナローはバイブルの横幅を15mm短くすることで紙面の面積は84%になっているが、箇条書きではマイナス16%の窮屈さは感じない。それよりも適度なナローの紙面はページを使いきれないかもというストレスを感じさせない、ちょうど良い空間に感じる。
日々デジタルな仮想空間に頭を浸していると情報過多になりがちだ。アナログな人間の頭の中で整理する情報の一区画としてはナローの面積くらいが最適なのではないだろうか。ちなみにナローのリフィル面積は、郵便ハガキやA6サイズとほぼ同じ。A6は情報カードでも多用される大きさだ。
手帳を備忘録として活用する場合は一般的に箇条書きが多用される。バイブルサイズのユーザーの方は記入した過去のリフィルを見返してみて欲しい。自分の場合、かなりの割合で紙面の右側に空きがある。ナローはバイブルの横幅を15mm短くすることで紙面の面積は84%になっているが、箇条書きではマイナス16%の窮屈さは感じない。それよりも適度なナローの紙面はページを使いきれないかもというストレスを感じさせない、ちょうど良い空間に感じる。
日々デジタルな仮想空間に頭を浸していると情報過多になりがちだ。アナログな人間の頭の中で整理する情報の一区画としてはナローの面積くらいが最適なのではないだろうか。ちなみにナローのリフィル面積は、郵便ハガキやA6サイズとほぼ同じ。A6は情報カードでも多用される大きさだ。
「ノックス」のノート・メモ用リフィルの「メモ罫線」は、用途や文字サイズに合わせて3種類の横罫線(5・6・7mm)が選べる。この中で6mm罫だけ中央の罫線が太くなっている。
ナローを見開きにしてこの太罫線を活用すると、上下左右で4つの正方形の空間ができる。仕事の手順、起承転結、(簡単な)PDCA、アイデアを整理する時にこの4つの矩形は大活躍してくれる。
「見開き2週間」はナローユーザーに定評のある日付リフィルだ。コンパクトな見開きで1か月の約半分の予定を見渡せる。この見開きの間に1枚の「TODOリスト」を追加して、やるべきことを同時に一覧しているユーザーも多い。
薄型のナローなら2冊使いも軽快
システム手帳に書き込む量と頻度が多いユーザーは、できるだけ多くのリフィル枚数を持ち歩きたい。でも大口径のシステム手帳は大きく重いなぁ……。こんなジレンマを抱えている方にはナローの2冊使いをおすすめする。上写真はオーセンとピアスの2冊のナローを重ねた状態。厚さはどちらも約20mmと薄い。バッグからの取り出し、手帳の開閉、リフィルのめくりなど、システム手帳の取り回しすべてが軽快にできる。自分は2冊のナローに、ダイアリーとノート、仕事と私用、など役割を明確に分けて活用している。手帳の活用頻度が上がると手にする機会も増え、上質なレザーの経年変化も加速して楽しい。
「オーセン」ナローは通常のノートタイプに加えて「フラップ留めタイプ」もある。ナローとしては異色の横幅にゆとりがある設計だ。実はこのゆとり設計を生かした裏技がある。ぎりぎりでバイブルサイズのリフィルも装着できるのだ。上写真はバイブルリフィルを装着した状態。リング径11mmの薄型設計が生むペタンコなフラットさと包み込む機能が融合したこの形は、たくさんの可能性を秘めたナローの新しいスタイルといえるだろう。
リフィルのパンチ穴もハイブリッド
ナローのリング配置はバイブルと同じだが、リフィルのパンチ穴の直径やノド(端からパンチ穴センター位置まで)の長さはミニと同じ。リングとパンチ穴の設計もバイブルとミニが巧みに融合したハイブリッド仕様だ。
上写真は、ナローとバイブルのリフィルの穴を並べたもの。右がナロー、左がバイブルだ。穴の直径はバイブルに対し1mm小さい(ナロー=4mm/バイブル=5mm)。これはリング径11mmの細めのリングを前提にした設計だ。穴が小さいのでリフィルのガタつきが少なく(ミニと同じあの使用感ですね)、安定した筆記を助けてくれる。
ノドの距離はバイブルに対して1.5mm短い(ナロー=5mm/バイブル=6.5mm)。11mmの小さいリングに多めのリフィルを綴じても、リング内側で向き合うリフィルのノド同士が干渉しづらく、めくりやすい特長がある。
豊富に揃うアクセサリーもナロー独自の仕様に合わせて設計してある。例えば上写真のページファインダー。穴の仕様は当然ながらナローの仕様で、横幅もバイブルに合わせて5mmスリムにしたナロー仕様になっている。ナローサイズに限らず、ノックスのこのページファインダーも傑作だと思う。装着したまま紙面を確認できるクリアでシンプルなデザイン、穴には切れ込みがありリングを綴じたまま着脱ができる。素材はしなやかで着脱の所作もスムーズだ。システム手帳やリフィルの各モデルが秘めたナローならではの個性はまだまだあり、もっと語り尽くしたいのだけれど、今回はこの辺で。
ナロー未体験の方はぜひ気軽にチャレンジしてみて欲しい。バイブルサイズがお手元にあるなら(特に小さめのリング径モデル)、そこにナローのリフィルを綴じるだけで紙面の使い勝手をすぐに体感できる。バイブルとミニが見事に融合したナローの世界は奥深く、そして無限の可能性を秘めている。
文・写真/清水茂樹(編集者・文具ディレクター)
1965年生まれ。
2004年に日本で唯一の文房具の定期誌「趣味の文具箱」を創刊。2016年からはシステム手帳の魅力と最新情報を発信する雑誌「システム手帳スタイル」を発刊。2009年から2022年まで日本文具大賞(ISOT)審査委員。
現在は主にシステム手帳の商品企画と、魅力の発信に取り組んでいる。
1965年生まれ。
2004年に日本で唯一の文房具の定期誌「趣味の文具箱」を創刊。2016年からはシステム手帳の魅力と最新情報を発信する雑誌「システム手帳スタイル」を発刊。2009年から2022年まで日本文具大賞(ISOT)審査委員。
現在は主にシステム手帳の商品企画と、魅力の発信に取り組んでいる。
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