自分が「ノックス」のシステム手帳を使い始めたのは月刊誌の雑誌編集を始めた1987年頃だったと思う。日々襲いかかってくるさまざまな締め切り仕事をこなすために、システム手帳は必須の道具だった。そして今でも。
上の写真は、この30年で主に愛用してきた主要なモデルたち。これ以外にも多くのシステム手帳を使ってきた。好きが高じてシステム手帳だけをテーマにした雑誌も作ってしまった。システム手帳を買うこと、使うことは仕事なのか、趣味なのか、自分ではもう判別不能。趣味で手に入れた歴代の道具には自分史が投影されていく。物欲が高まり、新しいシステム手帳を手に入れる度にシステム手帳が与えてくれる快楽に身を委ね、エゴイスティックな好き嫌いを積み重ねていく。自由で気儘。だから趣味は楽しい。
「ノックス」のシステム手帳がこの世に誕生したのは1985年。40年を超えるブランドの「真髄」を語るなど僭越ではあるが、「ノックスってどんなブランドなの?」という皆さんの素朴な疑問に向け、ここではユーザーの極私的な視点で語ってみようと思う。「ノックス」の自分史にはロングセラーの「ピアス」や「ブライドル」、「オーセン」などの名品が横たわっている。なぜ「ノックス」のシステム手帳に魅了されてきたのか。愛用しているモデルたちを眺めて出てきたキーワードは「素材」「凄技」「革新」だ。
上の写真は、この30年で主に愛用してきた主要なモデルたち。これ以外にも多くのシステム手帳を使ってきた。好きが高じてシステム手帳だけをテーマにした雑誌も作ってしまった。システム手帳を買うこと、使うことは仕事なのか、趣味なのか、自分ではもう判別不能。趣味で手に入れた歴代の道具には自分史が投影されていく。物欲が高まり、新しいシステム手帳を手に入れる度にシステム手帳が与えてくれる快楽に身を委ね、エゴイスティックな好き嫌いを積み重ねていく。自由で気儘。だから趣味は楽しい。
「ノックス」のシステム手帳がこの世に誕生したのは1985年。40年を超えるブランドの「真髄」を語るなど僭越ではあるが、「ノックスってどんなブランドなの?」という皆さんの素朴な疑問に向け、ここではユーザーの極私的な視点で語ってみようと思う。「ノックス」の自分史にはロングセラーの「ピアス」や「ブライドル」、「オーセン」などの名品が横たわっている。なぜ「ノックス」のシステム手帳に魅了されてきたのか。愛用しているモデルたちを眺めて出てきたキーワードは「素材」「凄技」「革新」だ。
「ノックス」デザインの源流は「素材」
2つのハイエンドモデル「オーセン」と「フラクト」では、フルベジタブルタンニンなめしのレザーを使っており、毎日システム手帳を開くたびに極上なレザーの使い心地を五感で感じることができる。「オーセン」のブラックは漆黒に、「フラクト」のナチュラルは飴色のブラウンに色の深みを増している。どちらも、とても堅牢で、使い込むほどに艶が上がっていく。
「ノックス」のデザインの源は「素材」。「ノックス」のすべてのモデルが完成までに通過してきた道の源流を遡っていくと、そこには極上の素材がある。どのモデルもシステム手帳好きが悶えるような味わい深いレザーを厳選し、素材の良さを引き出す機能とデザインを構築することから設計が始まっている。
「ノックス」のデザインの源は「素材」。「ノックス」のすべてのモデルが完成までに通過してきた道の源流を遡っていくと、そこには極上の素材がある。どのモデルもシステム手帳好きが悶えるような味わい深いレザーを厳選し、素材の良さを引き出す機能とデザインを構築することから設計が始まっている。
約30年前に入手した「ピアス」(バイブル・リング径11mm)。当時発売していたベルトなしの薄型な作りで、スケジュールとTO DO リフィルだけを綴じて日々軽快に使い続けてきている。予定や目前の仕事、進捗状況などを把握するために毎日かなりの頻度で手に取り、開閉を繰り返していたら、ベジタブルタンニン鞣しのバッファローカーフは鏡面仕上げのような艶を帯びていた。
職人の「凄技」
ハンドメイドによる緻密な物作りも「ノックス」の真髄。日本の革小物の伝統や製造に伝わる技を大切にしている。入念なステッチや各パーツのフォルムに潜む緩やかな曲線など、システム手帳を構成している細部の美が寄り合うことで全体の美しい佇まいを生み出している。
約8年使っている「オーセン」のコバ。絶妙に丸みを帯びた美しい仕上げと隣接する緻密なステッチがアナログな道具感を強烈に放つ。日々、この風景を目にする度に幸せな心持ちになる。
「フラクト」の剣先ベルト。パーツのフォルムと漉き具合(厚みの調整)、力強い縫製が融合することでシステム手帳が求める理想のベルトを作り上げている。堅牢かつ、ベルトの抜き挿しをスムーズにする機能美を宿す。中央の力強いハンドステッチからは手作業が生む温もりが伝わってくる。
伝統の技術が生む「革新」のデザイン
極上の素材と物作りの凄技に革新的デザインが加わることで、「ノックス」のシステム手帳には独特の個性が際立つ。文学、音楽、絵画芸術、数学など多くの芸術や原理に潜在する美は、全体の調和の中に際どい均衡を宿しているものだ。「ノックス」のシステム手帳は選び抜かれた素材と機能美が調和しながら、その中に尖った斬新さを含んでいることも特徴。新しいモデルが登場し、それを手にする度に「攻めてる!」と思わず口にしてしまうのだ。
「フラクト」のカバーの縫製。よく観察するとステッチの縦と横それぞれのリズムに変化を加えている。縫製はすべて旧式の(電動ではない)足踏みミシンを使い、ひと針ずつじっくりと縫っている。緻密さの中のハンドメイドのゆらぎがこのモデルの個性を表出する。そして、ここは「フラクト」の象徴でもある中面左のササマチポケットが合体している部分でもある。システム手帳のコバは「へり返し」で、ここにササマチポケットの「切り目」と呼ばれるコバが合体。へり返しの丸みを帯びた部分は、タンニン鞣しの革独特のエージングが進み、飴色の艶と深みがどんどん増していく。隣接したポケットのコバは磨きがかかっていて光沢を放っている。へり返しと切り目を融合させたハイブリッドなコバの斬新な風景はこのモデルの独擅場と言えるだろう。
「エヌ/ピアス」のカバーに大胆に配置したペンホルダー。ベジタブルタンニン鞣しのシュリンクレザーとナチュラルタンレザーを絶妙に組み合わせてデザインしている。上質なレザーが放つ色気、テクスチャー、手触りなどがそれぞれのパーツで経年変化を重ね、使い込んでいくと持ち主のスタイルに寄り添うように景色が変化していく。普段使いの道具に潜む斬新なこの非日常感は、素材の掛け合わせが生み出す快楽といえるだろう。書きたい時にペンを瞬時に取り出せる配置の機能も見逃せない。
「DP用紙」は理想を追求したリフィルの素材
最高の素材を志向する「ノックス」の真髄はリフィルにも宿っている。リフィルに使われている「DP用紙」はシステム手帳に向けて開発された筆記用紙。「DP」とは「デザインフィル ポケットブック」を表す。極上の書き心地で多くのシステム手帳ユーザーから絶大に支持されている。
システム手帳のリフィルにはリング金具で綴じるためのパンチ穴がある。リフィルを閉じるバインダーは本革製で金具を装着しているのである程度の重さがある。だからシステム手帳のリフィル用紙の性能には、何回めくっても破れづらい丈夫さと、軽さ、薄さが要求される。さらに筆記する時の条件としては、インクのにじみが少なく、裏側にインクが抜けづらく、裏移り(ページを閉じたときに上に重なったリフィルにインクが付くこと)を極力防ぐための紙面でのインクの乾きやすさが求められる。このような理想の条件に近付くために、DP用紙はパルプ配分などを徹底的に研究して完成したオリジナル用紙だ。紙の素材密度を高めることで、薄くて軽く、破れにくい。そして筆記した線はにじみが少なく、かつ乾きやすい。書き心地はとても滑らかだ。
自分が愛用している「ノックス」のシステム手帳たちは、生活に密着しながら、生活をより豊かにする道具として活躍している。システム手帳には、素材や作り、そして個性を求めたい。上質な素材とデザインが作るシステム手帳は、存在そのものが自分にとって幸せを運んでくれる大切な道具だから。
自分が愛用している「ノックス」のシステム手帳たちは、生活に密着しながら、生活をより豊かにする道具として活躍している。システム手帳には、素材や作り、そして個性を求めたい。上質な素材とデザインが作るシステム手帳は、存在そのものが自分にとって幸せを運んでくれる大切な道具だから。
文・写真/清水茂樹(編集者・文具ディレクター)
1965年生まれ。
2004年に日本で唯一の文房具の定期誌「趣味の文具箱」を創刊。2016年からはシステム手帳の魅力と最新情報を発信する雑誌「システム手帳スタイル」を発刊。2009年から2022年まで日本文具大賞(ISOT)審査委員。
現在は主にシステム手帳の商品企画と、魅力の発信に取り組んでいる。
1965年生まれ。
2004年に日本で唯一の文房具の定期誌「趣味の文具箱」を創刊。2016年からはシステム手帳の魅力と最新情報を発信する雑誌「システム手帳スタイル」を発刊。2009年から2022年まで日本文具大賞(ISOT)審査委員。
現在は主にシステム手帳の商品企画と、魅力の発信に取り組んでいる。
本コラムで紹介した製品
KNOXストーリー